勧士とは
勧士制度とは、信徒説教者を育成するプログラムです。聖書学院の信徒コースで通学や通信で履修し、教区長ないしは責任牧師の推薦を受けた方が、面談・面接などを受け、ホーリネス教団によって信徒説教者として認定されていくプログラムです。礼拝や諸集会で説教し、或いは無牧の教会などでも説教と牧会の役割を担える人材の養成を目指しています。説教と牧会の働きを担うために丁寧なプログラムが組まれていて、受講した方々には、聖書を体系的に学ぶ、良い機会になったと好評のカリキュラムです。
また、勧士の役割は、主と教会に仕え、牧師と共にキリストの体を建て上げることを目指します。そのために誠実さと愛と謙遜をもって仕える必要があります。牧師不足の現状において、かけがえのない福音を聖書から説教する尊い務め、喜びの奉仕でもあります。18世紀の英国と米国において、ジョン・ウェスレーは信徒説教者を用いて、メソジスト運動が前進しました。ホーリネス教団では、勧士として任命を受けている方々おります。
聖書学院に入学し直接献身に導かれる人が起こされることを祈ると共に、職業を持ちつつ、主の福音宣教と牧会の業のために召される信徒説教者が起こされるようにお祈りください。主の促しを感じている方もあるかもしれません。主の働き人が起こされるように、お祈り頂けますようにお願いいたします。
サーバントリーダーである勧士
当時私は公立小学校の校長をしながら4年後に退職を控えていました。その時「特に退職後の仕事のことは考えていませんが、何か神様の為にお役に立つことがあれば良いのですが…?」と答えたのです。するとN先生は「何をするにしても今、退職前に聖書の勉強をしておくことが必要だよ。JTJ宣教神学校に入ったらどう…」と勧められました。
当時日本ホーリネス教団には、まだ現在の体制での「勧士制度」はありませんでした。そのために現役の信徒がいつでも入学でき、通信で学んで牧師の資格を取得できる「JTJ宣教神学校の牧師コース」は私にとって魅力でした。そして2003年から2年間この神学校で学び2005年に「牧師養成コース」を卒業しました。この2年間の学びは有益でした。
その後2005年に日本ホーリネス教団の総会で「勧士規程」が承認され、新体制での勧士制度が発足したという情報を主任牧師から聞きました。JTJ宣教神学校は卒業したものの、私自身教団の学びを十分していない事にも気づかされ、教団の勧士教育の学びの必要性を感じました。
教団の勧士教育の学びは2005年~2007年の2年間に渡りました。220単位の勧士志願カリキュラムは職場の仕事が終わり、帰宅して毎晩眠たい目をこすりながらDVDを見てレポート提出、さらに夏の勧士セミナーでの「説教研修」と「牧会研修」に参加して、やっと取得できたのは2007年の春のことでした。同じ年私は37年間の教職生活に終止符を打ちました。2007年3月教団総会で新体制の勧士第1号として任命されたのでした。
日本ホーリネス教団の「勧士に関する規程」の「職務」には次のように書かれています。
「勧士は、日本ホーリネス教団によって公認された信徒説教者として、日本ホーリネス教団に所属する教会の礼拝及び諸集会において説教を行うとともに専任の牧師が任命されていない教会(無牧の教会)などにおいては牧会の任にあたることができる」
この文面から考えて、勧士が所属教会で関わる職務には「信徒説教者としての奉仕」と「信徒牧会者としての奉仕」の二面性があることが分かります。
以下私が所属教会内で現在行っている勧士としての奉仕内容の一端を紹介します。
まず「信徒説教者としての奉仕」ですが、毎月3回の集会メッセージを担当しています。(日曜礼拝・木曜祈祷会・家庭集会)この集会を通して私が心がけているのは以下3つの事です。
1.聖書の御言葉を中心にイエス・キリスト自身を語るという事
このことは当たり前のことですが、御言葉が、聞く者の心に残るような語りをしたいと願っています。そしてイエス・キリストを語ることが一番肝心ではないでしょうか。
2.聴衆と共にメッセージを造り上げるという事
用意したメッセージをそのまま語るのではなくて、聞く者の状態をよく見極めて聴衆と共に御言葉を味わって行くという姿勢を大切にして語る。
3.信徒説教者としての姿勢を持って語ること
勧士は信徒の視線で語ることが大事です。信徒でなければ体験していないキャリヤを 大いに生かして語るところに勧士のメッセージの良さがあると思うのです。
続けて私の「信徒牧会者としての心がけ」を3つ書きます。
1.教会員に「笑顔で」「明るく」「声を掛ける」ことから始める
信徒の代表者としての勧士のすべきことは、笑顔で教会員に話しかけることが第一です。私は毎週の礼拝時に受付に立って礼拝参加者に挨拶することから始めています。
2.牧師の牧会方針を補佐する立場にあること
所属教会には長い伝統と主任牧師の牧会方針があります。この牧会方針を尊重して、 からだなるキリストの教会を立て上げるために牧師を補佐していくことに徹します。
3.教会員一人ひとりの霊的状態を理解することに努める
毎月のスタッフ会議(牧師夫妻・副牧師・勧士・執事)で信徒の状況を共有化します。 そこで得た情報を大切にして信徒一人ひとりを理解することが大事です。
教団・教育局主催の、ある夏の勧士セミナーで、S先生が「勧士とはサーバントリーダーです」とおっしゃいました。まさに勧士はそれぞれの所属教会で「仕える人の先頭」に立つ存在だと思っています。
第5回 勧士志願者及び勧士牧会セミナー報告
2015年8月11日~13日、三鷹市にあるナザレ修道女会エピファニー館を会場に、「勧士志願者及び勧士牧会セミナー」が開催されました。勧士志願者三名、勧士十一名、講師一名、スタッフ四名が参加し、充実した学びのときを持ちました。
今回の講師は、島津吉成牧師(教団総務局長・辻堂教会)で、「成熟を目指して」(エペソ4:11~16)をテーマに、『健全な信仰とは何か(丸屋真也著)』という本をテキストとし、勧士の一人ひとりが、そして、教会が、成熟した信仰(健全な信仰)に生きることができるようにという観点から、島津牧師の自らの体験談を交えて、具体的な事例を用いながら、ていねいに教えていただくことができました。
特に、勧士は、教職者によってととのえられると共に、教職者と共に、聖徒たちをととのえる働きをすることが必要であり、「教会の底辺に立つ人」となることが大切であること、また、霊的自立、心理的自立、関係的自立、経済的自立が必要であることも学びました。
更に、「おむすびの祈り」の著者であり、青森、岩木山麓にある“森のイスキア”主宰の佐藤初女さんのビデオを鑑賞して、彼女の握るおむすびなどの愛情のこもったお料理とおもてなし、そして、親身になって話を聴いてあげることにより、訪ねてくる多くの悩める人々が心を癒されて、元気になって帰っていくという働きを知ることができ、教会の原点はこういうものではないかということを示していただきました。また、二日目の夜は、「勧士の牧会の実際」と題して懇談会がもたれ、これからの勧士のあるべき姿や、現在かかえている問題点などについて、活発な意見が出されました。
このように、全国から勧士志願者及び勧士が一つ所に集まって、絆を深めることができたことは、大変意義のあることでした。これからの勧士の働きのために覚えてお祈りください。