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(2017年9月「りばいばる」奉仕局だより)

「ネットワークで地域に仕える教会」

緊急支援対策室 山田 智朗

 
 気象庁のホームページには、国内で発生した過去の地震のデータベースが載っています。これによると、1923年9月1日の「大正関東地震(関東大震災)」以降、昨年
12月28日の「茨城県北部地震」までの約94年の間、最大震度が「6」以上の地震は66
回発生していますが、実にこのうち51回が、1995年1月17日に発生した「兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)」以後の約23年間に発生しています。
 
 これに対して大正関東地震から兵庫県南部地震までの約72年間には最大震度「6」以上の地震は15回、特に1948年6月28日の「福井地震」から1993年1月15日の「釧路沖地震」までの約44年の間には、わずか4回しか発生していません(右の二つの地震以外
に1972年12月4日の「八丈島東方沖地震」と1982年3月21日の「浦河沖地震」)。私が生まれたのが1958年ですから、「八丈島東方沖地震」の時は14歳、「浦河沖地震」の時は23歳、「釧路沖地震」の時が34歳でした。つまり私は人生の前半部を、ほとんど地震という災害を意識することなく過ごしてきたということになります。
 
 そして私が牧師になって5年目、宇治教会に赴任して、間もなく2年が過ぎようとしていた1995年1月17日未明、「兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)」に遭遇しました。ご存じのとおり、この地震で神戸を中心とした地域は壊滅状態となりました。倒壊した阪神高速道路にバスが半分落ちかかっている画像を覚えておられる方も多いと思います。
この地震は大きな被害をもたらしましたが、一方では「ボランティア元年」とも呼ばれ、多くのボランティアが被災地で活動し、この地震を契機として災害支援に取り組む団体が増えたといわれます(私たちの教団もその一つです)。
 
 しかし、当時の私は(今だから告白しますが)、「自分が現役の間は、このような大災害が発生することは、少なくとも国内ではもう二度とないだろう」と思っていました。これはやはり、先に述べたように、自分が生まれてからの30数年間、「大地震」といえる規模の地震が少なかったことが判断基準となっていたのだと思います。
 
 ところが、案に相違してその後、現在までの27年の間に最大震度「6」以上の地震はすでに51回発生しています(このうち4回は最大震度「7」)。日本の周辺は現在、明らかに地震の「活動期」に入っていると考えられるのです。
 
 しかも災害は地震だけではありません。昨年1年を振り返っても、8月には台風等による豪雨災害(岩手、北海道他)、12月には糸魚川市で大規模な火災が発生しました。今年もすでに九州北部で豪雨災害が発生しています。特に豪雨災害は、2013年には伊豆大島、2014年には広島、2015年には茨城(鬼怒川堤防決壊)と、ほぼ毎年発生し
ています。このように「災害」はすでに、私たちにとって他人ごとではない、身近で普通に起こることとして受け止めなくてはならないものとなっているのです。
 
 災害発生時の対応でよく使われる言葉に、「自助、共助、公助」があります。災害発生時、自衛隊、警察、消防等の行政機関による救援活動(公助)は、行方不明者の捜索や孤立地域に通じる道路の復旧等が優先され、避難所での支援物資配布等は、すぐには行うことができません。災害時はまず自分の身を自分で守る「自助」の意識が必要であり、この
ためには災害発生後数日間を自力で生きるための準備、非常食、飲料水等の備蓄、指定避難所や避難ルートの確認など、日常からの備えが欠かせません。
 一方、「自助」と「公助」の間をつなぐのが、地域や教会のネットワークによる「共助」です。皆さんが属している地域(自治会、町内会等)でも、すでに災害に備える活動を進めているところもあるかと思います。この「共助」の一環として今、全国で「教会防災ネットワーク」の構築が進められています。これは災害時に、地域のキリスト教会が協力して、他のネットワークと協力して地域支援を進めるというものです。すでに東京ではSOS(新宿大久保通り)、NHK(新座、東久留米、清瀬)、町田など各地で地域教会防災ネットワークがスタートし、市役所や消防署、町内会等の協力を得て「防災フェスタ」開催等の活動が行われています。また熊本地震の際に立ち上げられた「九州キリスト災害支援センター(九キ災)」も、九州各県で教会防災ネットワーク構築を進めており、先日の九州北部豪雨の際にもいち早く支援活動を開始することができました。またこの
ような地域の教会防災ネットワークの存在により、各教団や支援団体等の活動も、よりスムーズに行うことができるという利点も期待できます。
 
 すでに地域牧師会などのネットワークに加わっている教会もあるかと思いますが、どうぞ各地で「教会防災ネットワーク」を構築し、地域の皆さまと共に「共助」の一翼を担っていただきたいと思います。
 
 「活動期」に入ったとされる地震、「数十年に一度」といわれるような豪雨が毎年起こる「異常気象の常態化」等に取り巻かれている今、教会が取り組むべきこと、そのような状況の中で神さまに召されている教会の働きを、祈りつつ受け止めさせていただきたいと
願っています。